2021年11月から、“脂質” 測定の調査も始まった外部精度管理調査。測定機器の精度を確認するため、年に1回以上は参加することがガイドラインで明記されています。ここでは、外部精度管理調査の費用と一連の流れについてまとめました。無駄なくスムーズな実施のためにお役立てください。
外部精度管理調査の申し込み先
申し込むには、必ずしも検体測定室連携協議会の会員である必要はありません。ただ、年に1度はこの調査に参加しなければならないことを踏まえて、入会の検討をおこなうようにしましょう。
検体測定室ではガイドラインにしたがい、内部でおこなう精度管理のほかに外部でおこなう精度管理調査へ、年1回以上、参加する必要があります。
この「外部」とは、測定機器販売メーカーや医療機関ではありません。通常は、検体(血液)の標準物質について取り扱う第三者機関をさします。現在、検体測定室における測定機器について、この調査を提供しているのは 検体測定室 連携協議会 のみ。ガイドラインではどの団体の調査に参加するといったことは明記されていませんが、実績があって継続的におこなっている、こちらに依頼するのが無難です。
これは年に1度、検体測定室連携協議会が開催する外部研修「世界糖尿病デー・健康啓発セミナー」にて厚生労働省医政局の担当者が登壇された際にも、検体測定室連携協議会を通じて参加するように推奨していました。
※1 検体測定室に関するガイドライン(抜粋)
『 精度管理については、測定機器の製造業者等が示す保守・点検を実施するものとし、検体の測定に当たっては、複数人の検体を一度に測定しないものとする。
平成26年4月9日付医政発0409第4号厚生労働省医政局長通知 第2-13「精度管理」
また、検体測定室ごとに、精度管理責任者(医師、薬剤師又は臨床検査技師)を定め、精度管理責任者による定期的な内部精度管理を実施し、年1回以上、外部精度管理調査に参加するものとする。 』
外部精度管理にかかる3つの費用
調査に参加するための費用は、大きく分けて次の3つです。
費用① 調査への参加費
まず必要な費用は、当調査の一連を取りまとめて運営する、検体測定室連携協議会へ支払う調査参加費用です。この費用は、HbA1cか脂質のどちらか一方、もしくは両方といった測定項目で異なります。
さらに、検体測定室連携協議会の会員か非会員かでも差が出るため、継続を見込む検体測定事業者なら年会費を支払って会員となるほうが、長期的に見て安くすみます。 会員になると検体測定室の運営に関するさまざまな支援ツールの入手や、外部研修への参加費用も無料になるといった特典も。
会員 | 非会員 | |
HbA1cのみ | 20,000円 | (確認中) |
脂質4項目のみ | 15,000円 | (確認中) |
HbA1cと脂質4項目 | 35,000円 | (確認中) |
参加費用は、検体測定室連携協議会のサイトにて申し込み後に送られてくるメールに従い、銀行振り込みで支払います。この入金が確認されてから測定結果入力用のログインコードやパスワードが、同じくメールで送られてくるため、メールのチェックと保管には注意しましょう。
※詳細については、検体測定室連携協議会の公式サイト をご参考ください。
※当社は検体測定室連携協議会の法人正会員ですが、この記事や活動は入会の勧誘をおこなうものではありません。
費用② 測定用の試薬代
2つ目の費用は、試料検体を測定するための試薬カートリッジ代。測定機器1台につき、HbA1cでは最低4つ、脂質では最低2つの試薬が必要でこれらは送付物には含まれていません。
注意しておきたいのは準備する個数です。必要最低限のぎりぎりで用意しておくと、万が一、測定エラーやヒューマンエラーがおこった際に困ります。余裕をもって準備しておくようにしましょう。
もし、どうしても足りなくなってしまったときには、結果を該当サイト内へ入力するとき、「結果が入力できない理由」を入力できる欄があります。また、1回しか測定結果が出なかった場合でも出た値に対する総合評価は受けられるため、得られた値を入力して送信しましょう。
費用③ ほか消耗品&人件費
3つ目の費用は、使い捨てグローブやアルコール綿といった衛生用消耗品。加えて、測定し終えて残った試料検体やピペット、パラフィルム、ぬぐった酒精綿や紙類などを廃棄するための感染性廃棄物に関する費用です。
試料検体はあらかじめ、HBs抗原やHCV抗体、HIV抗体について検出されていないことを確認のうえ送付されているものの、感染性を完全に否定するものではありません。さらに、通常の測定業務と異なり、バイアルやピペットなど慣れない作業を伴うことで感染に対する注意も普段以上に必要です。
感染性廃棄物の専用廃棄箱(ハザードボックス)も十分な空きをもって備えておき、必要に応じてハザードマークのある専用ステッカーや廃棄袋なども用意しておくとよいでしょう。
また、この調査での測定は人手があった方がスムーズに実施できるため、数名でおこなうことを推奨します。その理由は、試料検体の入ったバイアルの開け閉めや、十分な転倒混和をした直後の測定試薬への充填、検体が付着した際のグローブ脱着や拭き取りといった対処、全作業を1時間以内におこなうために必要なタイムキーパーなど、いつもおこなう測定業務とは異なる作業が多いためです。
申込から実施までの流れ
一連の流れについては次の通りです。
受検者からよくある質問
この値はどのくらい正確ですか?
病院で測る値と同じですか?
イベントなど様々なシーンで検体測定室を運営していると、よく受検者さんからこういった質問を受けます。
これらに対し、説得力のある回答の1つとなるのが外部精度管理調査への参加です。その結果や調査概要について分かりやすく伝えられるよう、日頃からスタッフ間でシミレーションなどしておくとよいでしょう。
加えて、測定室内に結果報告書について掲示しておくと、受検者さんにとって安心材料となるかもしれません。
まとめ
検体測定室における外部精度管理調査は、参加することの意味を十分に理解しておこなうことが大切です。また、普段とは異なる作業や予期せぬエラー、慣れない作業に対する準備や心構え、加えて必要な費用の考慮も重要です。”ガイドラインに定められているから仕方ない”と考えるのではなく、これが受検者さんに対してより正確な値の提供と、関わるスタッフの意識向上の機会として捉えてみるのは如何でしょうか?
※この記事は2024年5月時点の情報です。ガイドラインの改正等で内容に相違の生じる際は、現状をご優先いただきますようお願い致します。