PHR接続の検体測定室が増加中!どのアプリを選ぶ?

PHR(パーソナルヘルスレコード)とは、保健医療情報について適切かつ効果的に活用できる環境の整備を目指す取り組みのこと。国民や患者にとっては、より主体的に健康管理のための情報を一元化して取り扱えるようになります。
マイナンバーカードを保険証として医療機関で提示する患者数も増えつつある2024年初夏、検体測定室でも民間PHR事業者が提供するアプリが増加中です。ここでは、検体測定室でおこなうPHRの解説ポイントから、現状で選択できる6つのPHRアプリを比較し紹介します!

目次

PHR(パーソナルヘルスレコード)とは?

PHRとはPersonal Health Record(パーソナルヘルスレコード)の頭文字の略で、保健医療情報について適切かつ効果的に活用できる環境の整備を目指す取り組みです。これには具体的に次に示す3つの、「整備」と「推進」が掲げられています。

出典:厚生労働省「PHR(Personal Health Record)サービスの利活用に向けた国の検討経緯について」別紙3

国民・患者による主体的な情報の活用を実現

1つ目は、「国民や患者が自らの保健医療情報を適切に管理し、取得できるインフラの整備」です。これまで病院や薬局、検査センターなど個別に管理されていた個人の情報を、デジタルデータとして生涯にわたり一元的に把握できるようになります。

国が整備するのはマイナポータルから取得できる整備で、これによって私たちはマイナポータルを介して好きなときに、自分の蓄積した情報の入手が可能に。また、病院や薬局では自分の意志で同意を示し、その情報を共有してより良い医療を受けることに役立ちます。

※マイナポータル:内閣府大臣官房番号制度担当室が運営する Web システムで、電子申請などのサービス提供や、利用者情報および各種情報の提供、やりとりの履歴について表示するもの。

個別ニーズに合う保健医療サービスの提供

2つ目は、「保健医療情報を、適切かつ効果的に活用できる環境の整備」です。公的な制度であるマイナポータルの利用でしか情報を活用できないのなら、それは医療機関に限って活用可能だと言わざるを得ません。つまり、多くのシーンで活用できるようなPHRサービスの普及が必要で、これには民間事業者の活力を用いることが不可欠です。

用語集より「PHRサービス」とは

令和4年4月に一部改正された「民間 PHR 事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」では、PHRサービスの用語について次のように示しています。

利用者が、予防又は健康づくり等に活用すること並びに医療及び介護現場で役立てること等を目的として、PHR を保存及び管理並びにリコメンド等を行うサービス。

民間 PHR 事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針 令和3年4月(令和4年4月一部改正)
総務省、厚生労働省、経済産業省 P.20 用語集

これを実現するため、個人情報に関する取り扱いなど細かいルールを設けた上で民間のPHR事業者をつくり、併せて「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」も定めました。
これによって私たちは治療や診療の枠に留まらず、様々なPHRサービスを利用することで自分の保健医療情報に基づくより良い提案を受け、パーソナライズされた実践が可能になるのです。

PHRを将来的な保健医療の発展に活かす

3つ目は、「質の高い保健医療を実現するための、保健医療情報の活用(研究開発等の推進)」です。これは国民や患者というより、将来的な保健医療の発展(サービスの質の向上)に向けた、データベースの構築やデータの二次利用の在り方に関する整理です。

そもそも、PHR誕生の経緯は2013年6月に通称アベノミクスにおいて当初掲げられた「三本の矢」のひとつ、「日本再興戦略」のなかで「国民の健康寿命の延伸」をテーマとして2014年、成立した健康・医療戦略推進法(平成26年法律第48号)に遡ります。この法律に基づいて、健康や医療に関する先端的研究開発および新産業の創出に関する施策の一手となるPHRを、政府が総合的かつ計画的に推進しているのです。

PHR「保健医療情報」の定義と共有の流れ

PHRで活用できる保健医療情報には3つの定義があり、このうちどれか1つでも当てはまっていれば該当します。

保健医療情報の3つの定義
  • 個人がマイナポータル API 等を活用して入手可能な、健康診断等の情報
  • 医療機関等から個人に提供され、個人が自ら入力する情報
  • 個人が自ら測定又は記録を行うものであって、医療機関等に提供する情報
用語集より「PHR」とは

令和4年4月に一部改正された「民間 PHR 事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」では、PHRの用語について次のように示しています。

Personal Health Record の略語。一般的には、生涯にわたる個人の保健医療情報(健診(検診)情報、予防接種歴、薬剤情報、検査結果等診療関連情報及び個人が自ら日々測定するバイタル等)である。電子記録として本人等が正確に把握し、自身の健康増進等に活用することが期待される。

民間 PHR 事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針 令和3年4月(令和4年4月一部改正)
総務省、厚生労働省、経済産業省 P.20 用語集

これら保健医療情報の発生源は健診を取り扱う学校や市町村、保険者、事業主健診を扱う事業主、医療機関などです。普段から薬局や医療機関に通う人なら、すでにマイナカードを用いた「オンライン資格確認等システム」を活用したことのある人もいるでしょう。この「マイナポータル」システムを使った情報入手は、個人の同意によって第三者と共有することが出来ます。

出典:厚生労働省「PHR(Personal Health Record)サービスの利活用に向けた国の検討経緯について」別紙3

さらに、第三者と共有できるのはこうした保健医療情報だけではありません。近年、急速に普及してきたスマートウォッチなどのウェアラブルデバイスや、フィットネスクラブなどで測った身体に関するデータ、自分のスマートフォンなどにインストールしている健康管理アプリのデータといったものも、自身が同意すれば共有できるのです。
その内容は上記3つの定義のうちいずれかに当てはまっていればよく、血糖値や体温、体脂肪、中性脂肪値というふうな詳しい情報の項目までは限定されていません。

検体測定室でPHRが増加!アプリ6つ比較

近年、検体測定室で測定した値もPHRサービスで共有できるようになり、すでに6つの民間PHR事業者によるアプリが提供されています。定期的な健診情報や受診時の採血情報に加え、検体測定室で得られるダイレクトな情報も一元的に管理することが、より詳しい経過について国民が自ら管理することにつながると期待されているのです。

例えば、特定検診や特定保健指導でアドバイスを受けて実践し、その成果を確認するために検体測定室を利用する人もいるはず。こうして得られた測定結果について、受診先や健診先ともスムーズに共有することが出来れば、より良い健康管理や行動変容につながるでしょう。

ただし、薬局やドラッグストアのような検体測定室を構える事業者のすべてが、このPHRサービスに対応している訳ではありません。測定機器(体外診断用医療機器)ごとに連携できるアプリは異なり、さらに事業所が対象とする測定機器の更新作業を終えているかといった点も確認が必要です。
加えて、こうしたPHRサービスを利用するにあたり、ほとんどのアプリがそれ単独では連携できません。あらかじめ個々のスマートフォンやタブレット端末に、マイナポータルのアプリをインストールしておく必要があります。つまり、検体測定事業所で活躍するスタッフは、これまで以上に幅広い知識とサポートが求められるようになるのかもしれません。

検体測定室でPHRサービスを利活用したい人は、測定の予約や申し込みをする際に、あらかじめ対応の有無を確認するとよいでしょう。また、健康管理アプリを初めて使う人やこれから活用を考えている人は、各アプリの特徴やメリットが異なることに注意が必要です。利用目的を考えてからダウンロードし、使い始めることをおすすめします。

※1.特徴については一部抜粋であり、あくまでも筆者の見解です。詳しくは各アプリのメーカー情報を優先してください。
※2.連携機器とはアプリに手入力しなくてもQRコードなどを利用し、自動で値が反映されることを差します。詳しい内容や手順については、各アプリの最新公開情報で確認してください。

検体測定室PHRアプリ比較

「国家プロジェクトSIP」検体測定室が明記

SIP(Strategic Innovation Program、戦略的イノベーション創造プログラム)とは、日本経済再生と持続的経済成長を実現するために14の課題を挙げ、社会を変えるために不可欠な科学技術イノベーションを推し進めるという国家プロジェクトです。2014年から始まって2024年は第3期目。

このなかで、「統合型ヘルスケアシステムの構築」という課題のひとつにテーマB-2「電子問診表と個人健康情報(PHR)を用いた受診支援・電子カルテ機能補助システムの開発」があり、ここに検体測定室は紐付けられています。 現行の検体測定室に関するガイドラインでは、「診療の用に供しない」という規制範囲はあるものの、ダイレクトで価値の高い検体測定の情報は将来、遠隔診療などに活用できる可能性があると期待され、検討されているのです。

難しく考えず、PHRを使ってみよう!

前述したように、すでにお薬手帳機能とマイナ連携機能を備えたアプリは稼働し、これに検体測定室で結果や日々の血圧、活動量なども合わせ、1つのPHRサービスで長期的な記録管理がおこなえる時代になってきました。
これまで紹介状や検査データを取り寄せることによって成り立っていた転院や治療も、検査データや受診記録といった詳しい情報まで個々が取り扱えることで、ひとり一人がより主体的に健康寿命延伸へ向けた取り組みの実践につながってくことでしょう。

何も持病や怪我がなく、継続した治療をおこなっていない人はまず、健康診断や健康診査の結果について確認してみるのもおすすめ。また、日々の血圧や体重、体脂肪、体組成、睡眠時間などを記録してみるのもよいでしょう。マイナポータルから取得した数年分のデータをグラフなどで可視化することで、自分の身体の変化や新しい目標に気付けるかもしれません。

マイナポータルを介して取得するデータに加え、日々の測定記録は災害など万が一のときにスムーズな治療を受けることにつながっていくはずです。難しく考えずに、“これなら出来そう”と感じる部分から、取り組んでみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

曽川 雅子のアバター 曽川 雅子 株式会社リテラブースト代表、薬剤師

大学卒業後15年間の薬局勤務を経て独立。
多彩なシーンで検体測定室のプロデュースと、エビデンスの確かな記事の執筆提供を中心に活動中。「ここで聞けて良かった!」というお声が原動力。

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