脂肪と「インスリン抵抗性」「脂肪肝」「肥満症」「アディポカイン」の関係

脂肪は1837年に中性脂肪を蓄える機能が発表されてから長い間、それ以外の役割はないと考えられてきました。しかし1980年代に入り、脂肪細胞の分泌機能や特異的なタンパク質の産生が明らかになると、その研究は飛躍的に進展します。
脂肪細胞はインスリンに対して高い感受性を持つため、その機能や過剰な蓄積による全身への影響を理解することは、生活習慣病のリスクを減らし、健康寿命を延ばすために欠かせません。

この記事では脂肪の基礎知識をはじめ、蓄積と消費(脂肪動員)の流れ、インスリン抵抗性、脂肪肝などの異所性脂肪、そして生理活性物質「アディポカイン」との関連性について紹介します。

目次

脂肪の主な役割7つ

「脂肪」と聞くと、体に溜まった余分な油というマイナスのイメージを抱く人が多いかもしれません。しかし、私たちの体にとって脂肪組織(脂肪細胞)※は、生命を維持するために欠かかせない存在です。脂肪組織には主に次の7つの役割があり、私たちの健康はこれらが正常に働くことで保たれています。

※この記事では、分かりやすくお伝えするため、脂肪組織の種類(白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞、ベージュ細胞)の厳密な区別は行わず、一括して「脂肪細胞」または「脂肪組織」として紹介していきます。

脂肪組織(脂肪細胞)の役割
  • エネルギー貯蔵
  • 生理活性物質(アディポカイン※)の産生・分泌
  • 臓器を守る(クッション作用)
  • 体温維持(断熱材となる)
  • 免疫調節
  • 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の貯蔵
  • 生殖機能やホルモンの維持

※アディポカイン(adipokine):脂肪細胞から分泌される生理活性物質の総称。日本で従来使われてきた「アディポサイトカイン」のことで、「脂肪組織(adipo-)」+「サイトカインの総称(-kine)」からなり、現在は国際的にこちらの呼び名が主流となっている。

たとえば1つ目の「エネルギー貯蔵」について、脂肪組織では普通の成人であれば、数か月間ほとんど食べなくても生きていけるほどの膨大なエネルギーを蓄えることが可能です。この貯蔵効率は、私たちの体内でもう一つエネルギー貯蔵の役割を担うグリコーゲンと比較すると、同じ重量当たりで約6倍もの量に相当します。

これほど沢山のエネルギーをコンパクトに貯蔵できる理由は、脂肪が水と馴染みにくい(疎水性)性質をもつから。対してグリコーゲンは、糖が多数連なって水と結合しやすい性質(親水性)があるため、その構造内には水分も含まれています。その結果、重量あたりに占めるエネルギー量が少なくなるのです。
実際に、グリコーゲンとして体内に蓄えられるエネルギーは、せいぜい24時間分に過ぎません。

一方、2つ目の「生理活性物質の産生・分泌」については、脂肪細胞が糖や脂質の代謝、血管の恒常性維持、さらには食欲までをもコントロールする重要な内分泌器官であることが分かってきました。脂肪細胞に由来し、こうしたさまざまな生理活性をもつ因子の総称を「アディポカイン」と呼びます。

近年の研究により脂肪は、活動量や熱産生に応じたエネルギーの収支を制御するだけでなく、このアディポカインを介して全身の健康にも一役買っていることが明らかになってきました。かつて、ただ余ったエネルギーを詰め込んでおくだけの蓄積臓器と考えられていた脂肪。しかし今や、全身の健康を維持するために欠かせない存在であるという認識に変わりつつあるのです。

脂肪が蓄積される流れ

私たちが食事から摂取したエネルギーが消費しきれずに余ると、体はそれを脂肪として蓄え始めます。この脂肪の出どころは、大きく分けて2つ。1つは食事から直接摂取された脂質(脂肪酸)で、もう1つはエネルギーを使って体内(主に肝臓と脂肪組織)で合成されたものです。このとき脂肪の材料になるのは主に糖質で、タンパク質も用いられはするものの、その量はごくわずかに過ぎません。

ここでは、運動不足などによってエネルギーが過剰状態となったときの脂肪蓄積の流れについて、要点をしぼってステップ順にまとめています。

過剰な脂肪蓄積の流れ(~異所性脂肪まで)
蓄積Step
食事により腸管から栄養素の吸収

糖質はグルコースへ、脂質は脂肪酸へ、タンパク質はアミノ酸へ分解され吸収される。

蓄積Step
血糖上昇により、膵臓からインスリンが分泌

インスリンの作用によって、筋肉や脂肪細胞では糖が取り込まれ、肝臓では脂肪分解の抑制とともに脂肪合成が促進される。

蓄積Step
運動不足や不活動があると、筋肉での消費が減り、余ったエネルギーが肝臓に集約

肝臓で、糖からアセチルCoAを経て各種の脂肪酸が合成される。

つくられた脂肪酸をもとに、中性脂肪(トリグリセリド)が合成される。

蓄積Step
肝臓からVLDLという形で、中性脂肪を血液中へ放出

脂肪細胞周囲の毛細血管に流れ込み、中性脂肪から脂肪酸へ分解される。

蓄積Step
脂肪細胞内へ取り込まれた脂肪酸から、再び中性脂肪が合成

中性脂肪に小胞体が作用して、脂肪滴が形成される。

エネルギーとして利用されなければ、脂肪滴は肥大化していく。

蓄積Step
脂肪滴が満杯になり、脂肪細胞が酸素不足に

ストレスによる炎症と、アディポカインの生産・分泌異常が起こる。

脂肪細胞の死に反応して、炎症を促進するマクロファージが働く結果、慢性的な炎症とインスリンの伝達障害が起こる。

蓄積Step
脂肪組織だけでは蓄積できない脂肪が、血液中へ露出

内臓脂肪(胃や腸の周りにつく脂肪)が増大する。

本来の貯蔵場所ではない臓器(肝臓、筋肉、膵臓、心臓)へ蓄積し、「異所性脂肪」を引き起こす。

脂肪を消費する(脂肪動員)流れ

体内のエネルギーが不足すると、脂肪細胞は蓄えていた脂肪を血液中に放出して全身に供給し始めます。この現象は「脂肪動員(しぼうどういん)」と呼ばれ、体内の脂肪を減らしたいと思う人にとっては、避けて通れない基礎知識です。

まず、脂肪動員の引き金になるのが、運動や空腹によって分泌されるアドレナリンやノルアドレナリンなどの「カテコールアミン」と呼ばれるホルモン。これらのホルモンが脂肪細胞の表面にある受容体に結合すると、その情報が細胞内に伝わります。
そこからいくつもの段階を経て、最終的に細胞内の酵素「PKA(タンパク質リン酸化酵素)」が活性化されます。現時点では、このPKAの働きがスイッチとなり、細胞内のさまざまなタンパク質が連携して脂肪の分解が始まるというのが有力な見解です。

スイッチが入ると、脂肪細胞の中で脂肪滴を構成する中性脂肪(トリグリセリド)が、「リパーゼ」という分解酵素によって「グリセロール」と「脂肪酸」に分解されます。このうち、実質的なエネルギー源となるのが脂肪酸です。
脂肪酸は血液中に分泌されますが、そのままでは血液に溶けません。そのため、アルブミンというタンパク質と結合した状態で血液にのって体内を循環し、エネルギーを必要としている各組織へと送り届けられます。

脂肪消費(脂肪動員)の流れ
消費Step
空腹や運動時などエネルギーが不足

カテコールアミン(グルカゴン、アドレナリン、ノルアドレナリン、長期飢餓時にはコルチゾール)が増加し、脂肪細胞表面の受容体に結合する。

消費Step
脂肪細胞内で脂肪分解のスイッチON

cAMP(サイクリックAMP)などの反応後、「PKA(タンパク質リン酸化酵素)」が活性化される。

PKAが、脂肪滴の表面にある保護タンパク(ペリリピン)をリン酸化することで、脂肪滴への酵素反応が始まる。

消費Step
脂肪滴の中の中性脂肪が分解

1分子の中性脂肪は、3本の遊離脂肪酸(FFA)と1分子のグリセロールへ分解される。

消費Step
脂肪細胞から血液中へ放出

脂肪酸は疎水性のため、アルブミンと結合した状態で血液中を循環する。

こうして各組織の細胞に取り込まれた脂肪酸は、細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアへと運ばれます。そこで酸素をつかって二酸化炭素と水にまで完全に分解(酸化)されることにより、私たちの生命活動に必要なエネルギー(ATP)を放出するのです。
ヒトの体内ではとくに、心臓や肝臓、骨格筋(筋肉)などが、脂肪酸を多く消費する臓器として知られています。

ちなみに、「脂肪を燃やすには有酸素運動が効果的」と聞いたことはありませんか?

運動を始めると、まずは糖質の豊富なグリコーゲンが優先的に消費され、続いて脂肪の消費が始まります。その際、脂肪酸をミトコンドリアで燃焼させるために、大量の酸素が欠かせません。これが、脂肪燃焼には息が上がるような激しい運動よりも、持続的な有酸素運動が有効であるとされる最大の理由です。

内臓脂肪と皮下脂肪のちがい

一般に「体脂肪」と呼ぶものは、大きく「内臓脂肪」と「皮下脂肪」の2つに分けられます。これらは同じ脂肪でありながら、つく場所も、その性質も全く異なるものです。

内臓脂肪は簡単にいうと、胃や腸といったお腹の臓器の周りにつく脂肪のこと。医学的には、門脈(肝臓と消化管をつなぐ太い静脈)付近につく「腸間膜脂肪※」と「大網脂肪※・小網脂肪※」の総称です。臓器を正しい位置に保ちながら、エネルギーの増減に応じて代謝調節を行うことで生命活動を維持します。見た目としては「リンゴ型肥満」と呼ばれ、手足は細いのにお腹の周囲だけがぽっこりと目立つのが特徴です。

対して、皮下脂肪は皮膚のすぐ下、とくに下腹部や腰回り、太ももなどにつきやすい脂肪のこと。外部の刺激から守るクッションの役割を果たしているほか、体温を逃がさないように断熱材としての機能も担っています。こちらは「洋ナシ形肥満」と呼ばれ、下半身を中心にボリュームが出ることが多いのが特徴です。

※腸間膜:大腸のうち、空調と回腸を腹部のうしろ側から支える腹膜の二重層。
※大網(だいもう):胃の下部と、その下にある小腸や横行結腸に、覆い被さるようにして臓器をつなぐ腹膜。
※小網(しょうもう):胃の上部と、十二指腸、肝臓をつなぐ腹膜。

内臓脂肪には皮下脂肪よりも圧倒的に多くの免疫細胞が存在し、分泌される生理活性物質の量も多いことが分かっています。加えて、交感神経の刺激に対する脂肪分解の反応性がつよいため、前述の「脂肪動員」のスイッチが入りやすいのも内臓脂肪です。

この2つの脂肪は、どちらも適度な量なら体にとって有益に働きます。しかし、増え過ぎると生理活性物質の分泌異常などを引き起こし、さまざまな疾患の発症リスクを高める要因になりかねません。

内臓脂肪が蓄積してしまう習慣

内臓脂肪が溜まってしまう最大の原因は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る「エネルギー過剰状態」です。加えて、単に食べ過ぎや運動不足という言葉だけでは片づけられない、ついやってしまいがちな身近な習慣の中に、内臓脂肪の蓄積を加速させてしまうポイントが隠されています。

その習慣として、まず挙げられるのが血糖値の急激な上昇です。
通常、血糖値が上がると体内ではインスリンというホルモンが分泌され、骨格筋など必要な組織へ糖を取り込むように作用します。
しかし、早食いや炭水化物が中心の偏った食事によって血糖値が急激に上がると、必要以上のインスリンが分泌されることに。すると、インスリンの作用によって血液中の余った糖が脂肪へと変えられ、体内に貯蔵する方向へ働いてしまうのです。

また、ファーストフードやスナック菓子などによる高脂肪食の摂り過ぎや、酸化されて正常に代謝されにくくなった油を多く含む揚げ物も注意したいポイント。食べる量そのものは過度でなくても、その内容や食べ方に普段から向き合う姿勢が、内臓脂肪を溜め込まない第一歩と言えます。

最近、体重は変わらないのに内臓脂肪だけが増えてしまうという2つの重要な要素の組み合わせに関する研究報告が発表されました。その要素とは、「不活動※」と「朝食を抜く(朝の欠食)」の2つです。

ラットを用いたこの研究によると、朝食を抜くと体内時計が狂い、1日の体温上昇のスタートが遅れることに伴って、肝臓や脂肪組織にある「脂質代謝に関わる遺伝子」の働きも後ろ倒しになります。これに「不活動」の状態が重なると、脂質の処理がうまくいかなくなり、内臓脂肪が溜め込まれていくことが分かりました。ただし、どちらか一方の要素だけでは、内臓脂肪の貯蔵は見られません。
この結果は、「不活動」と「朝食を抜く」ことの組み合わせが、いかに内臓脂肪の蓄積に関わっているかを物語っていると言えるでしょう。

脂肪組織の貯蔵スペースが満杯になると、これはもはや脂肪組織だけの問題ではなくなります。あふれ出た余分な脂肪酸が、本来なら一時的な保管しかできないはずの肝臓や骨格筋(筋肉)、心臓といった、ほかの臓器にまで過度に蓄積し始めてしまうのです。

※ここでいう「不活動」とは、自然災害で設置される避難場所での限られた生活などのような、普通の生活と比べて十分に動かない状態。

脂肪蓄積で高まる「インスリン抵抗性」

インスリン抵抗性とは、糖の濃度に応じて膵臓から分泌されるインスリンが十分な量あっても、個々の臓器におけるインスリンへの感受性が低下していることにより、その作用が十分に発揮されない状態のことです。

そもそもインスリンの作用は、骨格筋(筋肉)への糖(ブドウ糖)の取り込みを助けるだけではありません。ほかにも骨格筋や肝細胞でのグリコーゲン合成、脂質代謝、細胞の成長や増殖、血管拡張の調節など、生体内におけるエネルギー代謝機構の中心的な役割を担っています。そのため、インスリンへの感受性が低下した臓器では、これらのシステムも正しく働かなくなってしまう可能性があるのです。

また、インスリン抵抗性は、糖尿病やメタボリックシンドロームの根本的な病態であると考えられています。とくに日本などのアジア人では、欧米人に比べて皮下脂肪に脂肪を貯蔵しにくいという特徴があるため、見た目がやせている人でも体のあちこちで起こり得るインスリン抵抗性に注意しなければなりません。

脂肪の蓄積によってこのインスリン抵抗性が引き起こされる仕組みとしては、いくつかの経路が考えられています。たとえば、前述したアディポカインを介する影響のほか、酸化ストレスで生じる活性酸素、末梢での脂肪酸の影響、さらには脂肪組織における小胞体ストレス、低酸素、脂肪組織の線維化などが代表例です。

具体的には、脂肪が蓄積して脂肪細胞が肥大化すると、アディポカインの分泌異常が起こります。このうち、「TNF-α(腫瘍壊死因子α)」はマクロファージなどの免疫細胞から分泌される炎症性サイトカインの一種。肥大化した大型の脂肪細胞から分泌され、インスリン抵抗性をひき起こす要因の一つと考えられています。

一方、酸化ストレスで生じた活性酸素(ROS)は、各臓器の細胞内でミトコンドリアの合成を阻害し、細胞の機能異常を引き起こします。ミトコンドリアで正常な脂肪酸の代謝(β酸化)が行えなくなると、処理しきれない脂肪酸がどんどんあふれて細胞内に蓄積されていく結果、インスリン抵抗性が促進してしまうという流れです。

異所性脂肪の代表格「脂肪肝」

脂肪組織(皮下脂肪や内臓脂肪)のみならず、本来溜まるべきではない場所に脂肪が異常に蓄積してしまう現象を「異所性脂肪」と呼びます。その蓄積場所はインスリンが普段から作用している臓器で、肝臓や骨格筋(筋肉)、心臓のほか、膵臓や血管などが主な標的。つまり、「脂肪肝」も内臓脂肪そのものではなく、異所性脂肪の一種です。

この異所性脂肪によるインスリン抵抗性は臓器ごとに個別に生じますが、これらは単発で終わるわけではなく、互いに関連し合っていることも否定できません。最近の研究では、骨格筋に生じたインスリン抵抗性によって細胞内に取り込めず、血液中にあふれた糖が肝臓に運ばれ、中性脂肪の合成が進んで脂肪肝を形成するという、負の連鎖も明らかになっています。

そのほかに脂肪肝を引き起こす原因としては、アルコールの過剰摂取や、栄養の摂り過ぎによる「エネルギー過剰状態」、運動不足などが一因です。なかでも、お酒をそれほど飲まないにもかかわらず脂肪肝を呈する「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」は、いま世界的な増加傾向にあります。

※図は当サイト【脂肪肝の新概念SLD、「奈良宣言」が警鐘を鳴らす「ALT値>30」】より転載(https://literaboost.co.jp/news/blog/sld-liver/

旧称のNAFLDから現在のMASLDへ名称が改められたのは2023年のことで、まだ一般にはあまり聞き慣れない呼び名かもしれません。しかし、MASLDは肝硬変や肝がんの発症リスクを高めるだけでなく、心血管疾患の危険因子となることも事実。早期の段階ではほとんど自覚症状が見られないため、健康診断などで脂肪肝の疑いを指摘されたら、すぐに対策を始めましょう。

たとえば、加工食品などに多く含まれる「トランス脂肪酸」は、肝臓への脂肪蓄積や炎症を促進し、MASLDを悪化させる可能性が報告されています。このような普段の食事内容の見直しから、適度な運動とともに、毎日コツコツと継続して取り組んでいくことが大切です。

脂肪と「メタボ・肥満症」との関係

脂肪と関連付けて、「メタボリックシンドローム(MetS)」や「肥満症」を思い浮かべる人は少なくないでしょう。
それぞれの定義をひも解くと、まず「メタボリックシンドローム」は、内臓脂肪が過剰に蓄積された内蔵脂肪型肥満に加え、脂質異常や血圧高値、高血糖のうち2つ以上の代謝異常が重なり合った状態を指します。
一方の「肥満症」は、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積してBMIが25以上である状態のうち、肥満に起因または関連する健康障害がある、あるいは将来的な合併が予測され、医学的に減量を必要とする疾患です。

この2つに共通する背景には、いずれも「脂肪の過剰な蓄積」が存在します。とくに内臓脂肪の蓄積による健康リスクは双方の概念においても極めて重視され、近年その分子的メカニズムが次々と解明されている「アディポカイン」は、世界的にも注目度の高い研究分野です。

脂肪細胞由来「アディポカイン」とは

活発な「内分泌臓器」である脂肪組織は、さまざまな生理活性をもつ物質を産生・分泌しますが、それらの総称が「アディポカイン」です。本来、正常な脂肪細胞で構成される脂肪組織は、体の恒常性を保てるようにアディポカインの産生・分泌を制御しています。
しかし、中性脂肪を溜め込んで肥大化した脂肪細胞では、そのバランスに異常が起こる結果、体にとって悪い影響をもたらす方向に傾いてしまうのです。

具体的には、以下のような変化が挙げられます。

アディポカインの産生・分泌異常が招く作用
  • インスリンの効きを良くする「アディポネクチン」の分泌が低下する。
  • インスリン抵抗性を引き起こす、炎症性サイトカインの「TNF-α」「IL-6」の分泌が増加する。
  • 血栓がつくられやすくなる「PAI-1」の分泌が増加する。
  • 血圧上昇に関わる「アンジオテンシノーゲン」の分泌が増加する。
  • 炎症を引き起こす「MCP-1」の分泌が増加する。
  • 視床下部に作用して食欲抑制やエネルギー消費を促す「レプチン」が効きにくくなる(「レプチン抵抗性」の誘導)。

さまざまな代謝異常を招く病的な状態は、こうした内臓脂肪の蓄積に伴うアディポカインの異常によって、実に7割を説明できるとも言われています。だからこそ肥満症の治療では、内臓脂肪を減らしてアディポカインの分泌を正常化させ、これら多種多様な合併症を改善していくことを目的としているのです。

自分に合った脂肪ケアを探すには

“脂肪ケア”を考えるために、まず知っておきたいのが「肥満」と「肥満症」の違いです。予防医学の対象である肥満に対し、肥満症は医学的な治療を必要とする疾患を指します。もし肥満症と診断されたら、より的確かつ早期の改善を目指すためにも、医療機関を受診することが大切です。

また、BMIは単に体重の重さを示す指標に過ぎず、これだけで病気かどうかを判定することはできません。とくに、脂肪が増えて筋肉が減っている場合は、体重の変化が相殺されてしまうこともあります。体重の数値だけに頼らず、体組成計などで体脂肪率や筋肉量を継続的に計測することを念頭に置いておきましょう。

さらに、サプリメントなどの機能性表示食品を活用する際、SNSの誇大広告や根拠のないランキングに惑わされないように注意が必要です。成分や機能性、どの商品が自分に合うのか迷うときは、専門知識を持つプロを頼るのが賢い選択と言えます。かかりつけ医のほか、薬局やドラッグストア、店内に設置されている検体測定室などでも、医療従事者に相談することが可能です。

まずは、健康診断などを通じて、現在の自分の体内にある脂肪の状態を正しく知ること。そこから信頼できる情報をもとに、無理なく長く続けられる、自分に合った“脂肪ケア”を探して取り組んでいきましょう。

※この記事は2026年5月31日時点における情報を基に作成しています。現状と異なる場合は、行政など信頼のあるサイト等が発信する最新情報を優先してください。

よろしければシェアをお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

曽川 雅子のアバター 曽川 雅子 リテラブースト・薬剤師

薬局勤務で培った経験から、
多彩なシーンで検体測定室のプロデュースと、
エビデンス確かな記事執筆提供で活動中。
「ここで聞けて良かった」という声が原動力。

目次