検体測定室の「外部研修」は、社内や事業所内で自主的におこなう「内部研修」とちがい、さまざまな情報を得ることのできる貴重な機会です。ガイドラインでは、「内部研修に留まることなく、……外部研修を受講させる（抜粋）」という明記も。ここでは、検体測定室の外部研修に参加するメリットや必要性について紹介します。この研修をうまく活用し、運営責任者だけでなく測定従事者のスタッフ全員で、より良い運用へとつなげましょう。
外部研修の必要性
検体測定室では「検体測定室に関するガイドライン1)」（以降、ガイドラインと略）にしたがい、内部研修とは別に外部研修を受けることが必要です。ただ、参加における頻度や実施する機関については明記されていません。まずは、「内部研修」と「外部研修」の違いについて理解しておきましょう。
「内部研修」はガイドラインにおいて詳しい記載がないものの、その事業所（検体測定室）ごとに日常業務で必要な情報周知に関する研修と捉えることもできます。例えば、測定業務や必要な物品に関する取り扱い、受検者さんに対する支援のあり方、緊急時のスムーズな対応など細部にわたって周知することが大切です。
対して「外部研修」は、「内部研修」の上流にある研修要綱の大元といっても過言ではありません。その内容は、関係法令、精度管理、衛生管理、個人情報保護など。なかには検体測定室だけでなく、多岐にわたる業種で基盤となっている情報も含まれます。これらは随時、情勢や法改正に伴い見直されているため、短時間で効率よくこうした情報を得るには外部研修を活用するのがおすすめです。
1) 外部研修で扱われる情報とは？
『 運営責任者は、業務に従事する者に、内部研修に留まることなく、関係法令、精度管理、衛生管理、個人情報保護等について必要な外部研修を受講させるものとする。 』
検体測定室に関するガイドライン（抜粋）平成26年4月9日付医政発0409第4号厚生労働省医政局長通知 第2‐17
「研修」
どこで受講できる？
外部研修は2025年11月の時点で、検体測定室 連携協議会 が年に１回、11月14日の世界糖尿病デー※にあわせて開催しています。開催方法は、東京大学 医学部 鉄門記念講堂でのリアル参加と、オンライン（Vimeo）参加の、いわゆる”ハイブリット開催”。検体測定室に興味のある人なら運営責任者でなくても参加でき、情報を得ることが可能です※。
現に、検体測定室の事業開設者だけでなく、糖尿病や脂質異常症など生活習慣病の発症予防に取り組む製薬企業や一般社団法人、メディア関係者、医療機器製造販売業者など、幅広い分野からの参加者が集います。費用は検体測定室連携協議会の会員については無料、非会員は参加費用（数千円）を支払うことで受講可能です。
※世界糖尿病デー：糖尿病を正しく理解して予防や療養、偏見などについて啓発活動を呼びかける日として国際的に11月14日を定めている。
※検体測定室連携協議会の主催する外部研修について、非会員が参加する場合は有料です。詳しくは、検体測定室連携協議会の公式サイト をご参考ください。
※当該記事の執筆者は検体測定室連携協議会の個人正会員ですが、この記事や活動は入会の勧誘をおこなうものではありません。
受講メリットや情報内容
受講することで得られる最大のメリットは、関連団体における最新の知見や発表に加え、ガイドラインの発行元である厚生労働省の担当者による見解も得られるということでしょう。ここ4年間における、検体測定室連携協議会によって実施された外部研修「世界糖尿病デー・健康啓発セミナー」は、以下に記すような演題と登壇者で構成されていました。
現地での参加なら、セミナー後半で展開されるパネルディスカッションや質疑応答が、ふだん接する機会の少ない登壇者に対し、近状やこれからの展開に関する質問を投げかけるチャンスでもあります。加えて、最新情報が得られるほか、同じ志を抱く参加者と情報交換もできる良い機会です。
また、体外診断用診断機器製造販売企業の担当者がその場に居合わせれば、測定項目を増やして提供内容の充実を図りたい場合や、自施設で持つ測定機器の他にも導入を検討したい場合などに、スムーズな情報提供が受けられます。このような場合は、オンラインでの参加よりも、実際に足を運んでリアルで参加するのがおすすめです。
単に、ガイドラインで明記されているから仕方なく受講するのではなく、より多くの選択肢に触れる機会として活用してみてはいかがでしょうか？
| 2022年11月開催 外部研修の演題と登壇者 |
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●演題①「検体測定室ガイドラインについて」 |
| 2023年11月開催 外部研修の演題と登壇者 |
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●演題①「検体測定室ガイドラインについて」 |
| 2024年11月開催 外部研修の演題と登壇者 |
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●演題①「検体測定室ガイドラインについて」 |
| 2025年11月開催 外部研修の演題と登壇者 |
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●演題①「検体測定室ガイドラインについて」 |
外部研修で得られる受検者への回答
検体測定室はどうして保険がきかないの？
どの検体測定室でも同じ結果が出る？
他の項目も測れないの？
検体測定室に対して国はどんな期待をしているの？
ここに挙げるような質問は、受検者さんから頻繁に寄せられるものです。外部研修には、こうした質問に対する回答が見つかることもあります。
人によっては、検体測定室に健康診断の結果を持参し、検査の意味や結果の捉え方について質問する受検者さんも。受検者さんの疑問を解消し、満足度や理解度の向上に寄与するため、普段からこうした質問に対する回答を用意しておくことが重要です。
また、受検者さんのなかには、関心が高く勤勉で、最新の情報を求めて検体測定室を利用する人もいます。これに対し真摯に回答することで信頼関係が生まれ、そこから幅広い健康相談に発展していく可能性も大いにあるでしょう。
現代ではインターネットによる検索が広く普及し、健康情報についてさまざまな視点から膨大な情報が飛び交う時代です。なかには、専門的な知識がないと正しいかどうかの判断が難しく、戸惑ってしまうような内容も見られます。
一方、検体測定室における測定サービス提供は、医療従事者と対面で話しながら進めることが前提です。そのため、疑問に感じる健康情報の精査の場としても活用できます。そして、その根底には、医療従事者における確かな発信元からの情報収集が欠かせません。
受講したあとの活用例
受講したあとは、帳簿にその記録を残しておきましょう。
また、「研修修了証」を掲示することは、受検者さんに信頼感を与えるという点でも有用です。そのほか、講義の内容を反映したポスターやチラシなどをつくり、情報発信するといった活用例も。検体測定室を介するこうした活動が、個々のセルフメディケーションの動機付けになる可能性も秘めています。
そして、検体測定室の意義や利便性をまだ知らない人に対しても、さまざまな角度から潜在的なニーズを踏まえて分かりやすく情報共有していくことが大切です。一方、すでに検体測定室を利用する人においては、継続的な測定とともに情報のアップデートが行われることで、より良い自己健康管理につながることでしょう。
外部研修で得られる知識は、医療従事者などの関係者だけに限りません。なかには、一般の人のとっても押さえておきたい情報が多く含まれています。地域住民の健康増進に寄与するため情報を見極め、適切に配信していくことも、検体測定事業者に寄せられる期待の一つと言えるのではないでしょうか。
※この記事は2025年11月時点の情報です。ガイドラインの改正などにより変更が生じている際には、現状をご優先いただきますようお願いいたします。
