検体測定室では測定の精度を保つために2種類の精度管理を行い、測定機器やその手技を適切に管理していくことが必要です。ここでは「内部精度管理」を中心に、「外部精度管理」との違いや方法、流れについて紹介します。
そもそも精度管理って何?
精度管理とは、健診(検体測定室においては測定あるいは簡易血液検査)の精度を保つために、その検査全体について適切に管理すること※。これを実施することで見えてくるのが、検査をおこなう上で関わる問題点の有無や測定結果の正確性です。
このうち測定結果の正確性には測定機器の精度だけでなく、測定に従事する者の手技も大きく影響を与えます。たとえ、測定機器に故障や不具合がなくても、検体(血液)の取り扱い方や温度などの環境管理において不備があれば本来の測定結果を得ることはできません。
捉え方によっては、精度管理の実施は関わるスタッフの手順や認識を確認するためにも有用な手段といえるでしょう。
※参考:厚生労働省「第4章 健診の精度管理」
検体測定室での精度管理2つを比較
検体測定室では「検体測定室に関するガイドライン」(以降、ガイドラインと略)に従い、2つの精度管理を実施することが必要です。
まず1つ目は、自らの検体測定室内で同じ測定機器を使って認知の検体(血液)を何度か測定し、その再現性を確認する「内部精度管理」。もう1つは、複数の検体測定室が一斉に第三者機関の提供する同じ検体を測定し、自施設の測定機器がどれくらいの水準に位置するのかを確認する「外部精度管理」です。
簡単に言うと、内部精度管理は自社で完結する「精密度」を確認する自己評価。これに対し、外部精度管理は測定値の精度について「正確度」を保証するために第三者機関が関わる他己評価という風に捉えることができます。
内部精度管理を実施するタイミング
外部精度管理の場合、ガイドラインにおいて年に1回以上は参加することが義務付けられています。一方の内部精度管理については、そういった実施の頻度に関する明記はありません。これを実施するタイミングは様々ですが、例えば以下に挙げるような状況※が考えられます。
- 新たに測定機器を使い始めるとき
- 測定結果が予期していた値と大きく異なるとき
- 測定に従事する者が研修を行うとき
- 使用頻度が低く、30日に1回程度で精度を確認するとき
- 測定機器の設置環境(温度・湿度)が規定範囲を超えたとき
- 測定機器の耐用期間を超えているとき
- 測定機器のメンテナンスやバージョンアップを行ったとき
上に挙げたほか、いつもとは異なる音や振動、測定機器に何らかの破損、保守点検作業で異常を見つけたときには測定機器の製造業者(以下、メーカー)に問い合せて状態を確認することが必要です。
※参考:(株)リテラブーストの所有する一般医療機器 特定保守管理医療機器の添付文書およびユーザーガイド
内部精度管理の方法や費用、記録
内部精度管理にかかる費用は、メーカーが提供する標準検体(コントロール)を購入する費用が主です。日常的に測定用試薬(テストカートリッジ)を仕入れている卸業者を通じて購入します。
ただし、普段扱う測定用試薬の包装形態(Lot)や商品名については独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)の「体外診断用医薬品 情報検索」から情報を確認できるものの、標準検体については同様に調べることができません。メーカーにあらかじめ、製品名や13桁のJANコードについて問い合わせしておくとよいでしょう。
方法は日常的におこなう測定作業と大きくは変わらず、費用は1箱(2つの濃度が含まれる場合もある)で数千円※1ほどです。測定用試薬と同じように温度や湿度に加え、使用期間にも注意して保管します。また、開封した標準検体の保管期限についても事前にメーカーへ確認しておきましょう。
記録は外部精度管理と同様に、その内容や結果について20年間保管することが必要です。測定機器によっては機器本体にデータを蓄積する機能が付いているものの、閲覧できる状態の台帳に記録することが求められています。この台帳はデータの改ざんを行えないことなどを条件として、電子媒体での記録および保管も可能です※2。
※1 参考:(株)リテラブーストの所有する測定機器の標準検体で、メーカーにより差があります。
※2 参考:検体測定室に関するガイドラインに係る疑義解釈集(Q&A)「問22 台帳の保存は、電子媒体でも可能ですか」(平成26年6月)
精度管理責任者だけじゃない!
内部精度管理を含めた精度管理は医師または薬剤師、臨床検査技師の資格を持つ精度管理責任者によって定期的に実施する必要があります。加えて、測定に従事する者に対し、その情報を研修の一環として周知させていくことも大切です※。
こうした適切な管理を行うことで、より正確な測定結果を担保していきましょう。
※参考:「検体測定室に関するガイドライン 第2-17 研修」
※この記事は2024年3月時点の情報です。ガイドラインの改正などにより、手続きや届出等に変更がある際には現状をご優先ください。