「第1回脂質・第9回HbA1c」外部精度管理調査の結果と、調査報告書で見る検体測定室の実態

検体測定室の「外部精度管理調査」は、社内や事業所内で自主的におこなう「内部精度管理」と目的が異なり、どちらの実施も、より正確で安全な測定のために欠かせません。ここでは、外部精度管理調査に参加する意味や、なかでも、2021年11月に第1回の脂質調査が始まった当時の調査報告書から垣間見る、全国の検体測定室における実態について解説します。

目次

外部精度管理と内部精度管理の違い

検体測定室では「検体測定室に関するガイドライン1)」(以降、ガイドラインと略)にしたがい、内部精度管理とは別に外部精度管理の調査に参加することが必要です
まず、「内部精度管理」というのは、事業所内(社内)で同一機器に対して同じ検体を何度か測定し、その再現性が得られるかどうかを確認するもの
。対して、「外部精度管理」というのは、第三者機関(外部)が設定する同じ検体をつかって、持っている機器が参加施設内の中でどのような水準にいるのかを確認するものです。つまり、自己評価で「精密度」を見る内部精度管理に対して、外部精度管理では「正確度」を評価するという点で異なります。

また、実施する回数についても注意しましょう。「内部精度管理」は定期的に、精度管理責任者の判断によって、日常業務のなかでおこないます。一方の「外部精度管理」は年に1回以上、参加することが必要です。
ただし、「外部精度管理」は第三者機関が全国の検体測定室を対象におこなっているため、各事業所の都合でいつでも自由に実施することはできません。2024年時点で実施している機関は、検体測定室連携協議会 のみ。年に2回、温度管理が
比較的おこないやすい、5~6月と10~11月に実施されています。公式サイト を確認し、申し込みには余裕をもってタイミングを逃さないように注意しましょう

検体測定室に関するガイドライン平成26年4月9日付医政発0409第4号厚生労働省医政局長通知)」より精度管理に関する部分を抜粋

●第2-13「精度管理」
『 精度管理については、測定機器の製造業者等が示す保守・点検を実施するものとし、検体の測定に当たっては、複数人の検体を一度に測定しないものとする。また、検体測定室ごとに、精度管理責任者(医師、薬剤師又は臨床検査技師)を定め、精度管理責任者による定期的な内部精度管理を実施し、年1回以上、外部精度管理調査に参加するものとする。 』
●第2-22-ア「作業日誌」
『 測定機器保守管理作業日誌 』
●第2-23-エ「精度管理台帳」
『 精度管理台帳(内部・外部精度管理調査の結果の書類を整理した台帳)』

※当社は検体測定室連携協議会の法人正会員ですが、この記事や活動は入会の勧誘をおこなうものではありません。

「脂質」は2021年11月から開始

2017年11月から実質的に始まった外部精度管理調査において対象となっていた測定項目は、これまでHbA1c(1~2カ月前の血糖状態を示す項目)だけでした。当社でも2017年3月の創業以来、毎年これに参加し、備えている測定機器の正確さが適合範囲から外れていないことを確認しています。そして2021年11月より、脂質4項目を対象とした調査も始まりました。

この4項目とは、TG(中性脂肪)、LDLc(悪玉コレステロール)、HDLc(善玉コレステロール)、Non-HDLc(ノン・エイチディーエル・コレステロール)の4つの脂質です。とくに、TGについては2022年、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」が改正されたことで受検者さんからも注目の集まりやすい部分でしょう。
それまで測定時点での食事影響があることから、10時間以上の絶食でないかぎり、検体測定室でTGに重点をおくような機会はすくなかったはず。しかし、近年の食後高トリグリセライド血症に対する認識の広まりや、随時採血で TG 175mg/dLという値が当該ガイドラインに記されたことで、脂質測定の正確さに対する関心が高まってくるかもしれません。

「HbA1c」との相違点に注意

既存の「HbA1c」を対象とした外部精度管理調査と、「脂質」のそれとのちがいは2つあります。1つ目は「脂質」の場合、試験用試料の濃度が1種類であること。「HbA1c」では2種類の濃度がことなる試験用試料を、測定機器1台について各2回、したがって測定するためには合計4つの測定用試薬カートリッジが必要でした。これに対し「脂質」では濃度1種類の試験用試料を、測定機器1台で2回、測定するために2つの測定用試薬カートリッジですみます。

そして、もう1つのちがいは測定項目の数です。「HbA1c」が1つの数値(%)なのに対し、「脂質」では4つの数値(mg/mL)があります。この結果を報告(専用サイトへ入力)するとき、うっかり入力欄がずれているといったミスのないよう注意しましょう。

一方で、共通しているのは温度管理や時間配分、感染防止対策をきちんとおこなうことが重要だという点です。可能なら、予備の試薬カートリッジもいくつか備えておきましょう。実際、調査報告書によれば原因は定かでないものの、数件の施設は報告ができなかったという結果も出ています。何らかの原因による測定機器の停止や、試薬カートリッジ内をうまく試料が流れないといったエラーも想定しつつ、調査にのぞむことが大切です。

結果から分かること&対応

参加から2~3ヵ月ほどで届く調査結果により、備え持っている測定機器が正確な値に比べ、どのくらいの隔たりが生じるのかを確認することができます。ここでいう正確な値(目標値)とは、「脂質」では測定機器メーカーのラボで測定した平均値。一方の「HbA1c」では、検査医学標準物質機構による値です。測定結果がこれらの評価基準内に位置していれば、測定機器として問題はないという結果になります。
万が一、調査結果により問題があると認められたときには、製造機器メーカーに依頼して修理のほか、対策を講じることが必要です。

調査報告書で知る”検体測定室の今”

結果と一緒に届く「調査報告書」では、自施設の測定機器に関する結果に加え、貴重な情報を得ることもできます。たとえば、2022年8月末時点で全国に1,974件ある検体測定室(常設)のうち、脂質の測定を届け出ている施設はおよそ7割(約1,400件)です。興味深いのは、この約1,400件のうち、わずか10分の1ほどにあたる、154施設しか調査に参加していなかったということ。
これは年2回で実施されているために、11月の調査ではなく、5月の調査に参加する施設があることも理由のひとつでしょう。ただ、外部精度管理調査のことをよく知らないまま、参加せずに運営している施設がないとも言い切れません。今回の第1回「脂質」外部精度管理調査では、機器Aで96件、機器Bで58件の施設が参加していました。この結果は視点を変えると、検体測定室を管理する責任者の意識を問われるものと捉えることができるのかもしれません。

また、2021年11月に実施された外部精度管理調査の結論で見ると、「脂質」では参加した施設の98%にのぼる施設が評価基準を満たしていたのに対し、「HbA1c」で基準を満たしていた施設は91%。裏を返すと、少なからず基準を満たしていない施設もあるということを受け止め、過信することなく自施設で定期的に臨む姿勢が大切だということではないでしょうか?

調査の参加には一定の費用がかかるものの、これによって得られる結果は重要です。そして何より、受検者さんに対して信頼感を与えることにつながります。精密度と正確性を担保しつつ、より良い自己採血検査のシーン提供をおこなっていくために、この外部精度管理調査を内部精度管理と合わせて取り組んでいきましょう。

※機器Aまたは機器B:アボット ダイアグノスティクス メディカル株式会社、または、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社

この記事は2024年5月時点の情報です。ガイドラインの改正などにより変更が生じている際には、現状をご優先いただきますようお願いいたします。これをお読みくださったかたの、検索にかける時間や労力がほんの少しでも減ればうれしいかぎりです。

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この記事を書いた人

曽川 雅子のアバター 曽川 雅子 株式会社リテラブースト代表、薬剤師

大学卒業後15年間の薬局勤務を経て独立。
多彩なシーンで検体測定室のプロデュースと、エビデンスの確かな記事の執筆提供を中心に活動中。「ここで聞けて良かった!」というお声が原動力。

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