「ドラッグストアショー2024」検体測定室&薬剤師目線!いま注目の展示内容

ドラッグストアショー2024は昨年の2倍に近い動員数となり、悪天候のなかにも関わらず多くの来場者で賑わいました。これまで以上に内容の充実した「こどもやくざいし体験薬局」や特別企画のフェムケアゾーンなど、いまを色濃く映し出す内容の展示会です。ここでは、2024年8月30日~同年9月1日に開催されたこの展示会で、薬剤師と検体測定室の観点から印象に残った見どころについて紹介します。

目次

イベントの概略と動員数

ドラッグストアショーとは一般社団法人 日本チェーンドラッグストア協会(通称JACDS)が主催する、ドラッグストアの最新または一押し商品、そして画期的なサービスを身近に知ることの出来る展示会です。その会場を千葉県の幕張メッセから東京ビッグサイトに移し、3回目の開催となる今回の第24回(2024年8月30日~同年9月1日)は、国内外より参加者が駆けつけ、計3日間で昨年の動員数58,872名を大きく上回る、97,944名を動員しました※。

※参考:JAPANドラッグストアショー推進事務局の公式サイトより

基本的に3日間のうち初日は関係者のみが来場でき、企業の経営陣や現場で勤務する方々などが情報収集と他社の取り組みに触れることで、業界全体で発展を目指すために設けられている日です。そのため、一般生活者が来場できるのは中日と最終日の2日間。

今年の開催期間中はあいにくの台風に見舞われ、複数の在来線で一部が計画運休などをおこなっていたにも関わらず、初日23,767名、中日33,199名、最終日40,978名という動員数を見ても一般生活者から非常に注目を集めている展示会だということが分かります。
その会場内は東棟で4つのホールを12のゾーンで区切り、ビューティーケアゾーンやストア&ファーマシーソリューションゾーンなど、その近辺をめぐることでまとまった情報が得られるような配置です。

ドラッグストアショー2024の見どころ

ドラッグストアショー2024におけるテーマは、「これからの多様性のある社会に向けた、ドラッグストアの挑戦~自分にあったセルフメディケーションを探して~」。そのなかで、筆者がとくに興味深く感じた、企画やカテゴリーをいくつか抜粋して紹介します。

子どもも大人も学べる「お祭り広場」

今回、私が感じた、これまでに見たことのない画期的な企画は、東3ホールで開催されていた「お祭り広場」。そこでは、おうちでいらなくなった洋服やおもちゃ、食品、プラスチックボトル容器などを持参すると「お祭りチケット」がもらえて、そのチケットで射的やスーパーボールすくいなどが楽しめるという企画。参加した子どもたちはきっと、“もったいない”だけでなく、楽しみながらSDGsも学べたことでしょう。ほかには、メイクアップアーティストの体験やリサイクル工作なども展開されていました。

さらにここへ、いままで東4~6ホール内に設置されていた「こどもやくざいし体験薬局」も展開。これは、白衣を着た子どもが現場で働く薬剤師のサポートを受けながら、分包機(粉をセロポリなどの紙で包んで1回分ごとに接着する装置、いわゆる一包化装置)などを使って薬局薬剤師の仕事を体験するコーナーです。

ドラッグストアショーは流行りや最新技術に敏感な大人だけでなく、子どもにとっても、情報収集とアップデートが可能な展示会へと進化しつつあるのかもしれません。そして、こうした企画は大人にとっても、普段の自分を振り返るひとつのきっかけとなるのではないでしょうか?

体験型の「フェムケアゾーン」

今回、特別企画として雑誌「LDK the Beauty」のコラボレーションにより開催された「フェムケアゾーン」では、最新ケア用品に触れることのできるコーナーのほか、3日間を通じて計22のフェムケア・プレゼンテーションプログラムが展開されました。そこには、“ありのままの私へ”というサブタイトルが掲げられています。

ここで、業界の視点で女性に特化した出来事では、緊急避妊薬が一部の調剤薬局で処方せんなしに購入できるようになった※ことは記憶に新しく、まだ知らない一般生活者も多いのではないでしょうか。当プログラムのなかではJACDS法制委員会が「性教育とフェムケア~緊急避妊薬から考えるドラッグストアでできるサポート~」と題して講演も。
業界関係者だけでなく一般生活者も集う今回のような環境で、こうした情報を広く共有していくことが、医療従事者と一般生活者の医療に関する情報の溝をなくす糸口になっていくのかもしれません。

※現在おこなわれているのは、予期せぬ妊娠の可能性が生じた女性が処方せんなしに緊急避妊薬を適切に利用できる仕組みを検討することを目的とした調査研究です。一部の調剤薬局のみで販売されており、基本的にはこれまで同様に処方せんなしで購入することは出来ません。対象の薬局は、厚生労働省のサイトでその一覧が公開されています。

女性にとってうれしい機会だろうと感じたのは、生理用品を手に取って質感などを知ることのできる体験ゾーンです。多様性を求める現代では、もはや、“生理”という単語を発することに気負いを抱く必要はありません。ほかには、「40代からの女性のゆらぎに」と添えた大豆イソフラボンなどを配合する製品、α-ラクトミンというタンパク質の一種を含む製品など。いわゆる“フェムケアフード”も、数多く紹介されていました。

食も多様性!充実のキッチンカーゾーン

各ホールをつなぐロビーにはたくさんのベンチが設けられ、そこで昼食をとる人も多いなか、今回のイベントでは10種類のキッチンカーが東3ホール内に集結し、来場者の味覚も満たしていました。その内容は「ワールドグルメフェスタ」と題し、ローストビーフ丼やパエリア、ビビンバ、タコライス、ピッティパンナなど。まさに、味覚にも多様性の嵐です。

展示取材|薬剤師必見!散薬鑑査装置コナミル®

調剤薬局のなかで利用される鑑査装置について、どの位の人が興味を持っているでしょうか?たとえば、①錠剤やカプセル剤などの各薬をシートから出して飲むタイミングごとに一包化した場合、②錠剤を粉砕したりカプセル剤を外したりして包んだ粉薬、③薬局内で粉剤を分包した粉薬、④複数の粉剤を混ぜて一包にした粉薬など。とくに意識せず、服薬している人もいるかもしれません。しかし通常、そこには複数の確認作業が存在します。

※ここでは便宜上、調剤前の薬を“剤”、調剤後の薬を“薬”と表記しています。

このうち、①については多くの場合、薬剤情報提供書(薬の写真や名前、用法、用量、注意点などが記された情報提供文書、通称「薬情」)と見合わせることで、その中身を確認することが可能です。対して②と③は目視ではむずかしく、ましてや④ではその配合比まで見た目では判断できません。

ここに、機械を用いた鑑査方法で広く用いられているのが、散剤鑑査システムと呼ばれる装置です。これは、粉剤や錠剤の箱に施されている商品識別コード(バーコード、JANコード)をスキャンし、感熱紙にその計量情報などを記録して印刷したものを、薬剤師が視覚的に再度確認し鑑査する方法。秤量数を手書きで記すときの間違いや、薬剤のとり間違えなどを防ぐ目的で使われています。

そのほか、「自動秤量機能付き散薬分包機」という、コンピューターで処方内容を打ち込むと自動的に粉剤を秤量して一包ずつに仕上げる分包機も。ただ、機械が大きく場所を必要とすることや高額といった理由で、前者の鑑査装置のほうが多く用いられています。

ただし、これらの粉薬は調剤後もずっとその感熱紙と共に保管されていなければ、その中身を証明することは困難です。おそらく薬剤師の多くが、“それが当たり前”と理解していた部分でしょう。しかし今回、展示されている革命的な鑑査装置「一包化散薬鑑査装置コナミル®(株式会社ウィズレイ)」シリーズ2種類を見て、筆者は脳が一新されるのを感じました。

2023年12月に発売開始となった「コナミル®モバイル」は、一般的なサイズのタブレットと一体型で持ち運びも簡単。分包した粉薬をタブレットに付属の小さな部品に差し込むだけで近赤外分光法により薬剤の特定と、複数の混合薬ではその配合比まで、データベース内の波形と照合し鑑査できます。また、秤量器も合体し、成分鑑査と同時に重量鑑査も同時におこなえる「コナミル®ベース」(2024年4月に発売開始)も紹介していました。

今までの、調剤する薬剤の記録を主とした鑑査装置に対し、調剤後の仕上がった粉薬における特定に加え、成分量を1包ずつ細かく照合できるという全く新しい鑑査装置です。
高齢者における嚥下困難のために錠剤を粉砕した粉薬や、そのほか精神科や小児科、在宅支援など幅広い領域で粉薬の鑑査は欠かせません。近い将来、この鑑査装置は多くの領域から注目され、その需要も高まっていくことでしょう。

さらに期待が寄せられているのは、この鑑査装置は災害時にも非常に有効だということ。持ち運べる「コナミル®モバイル」は医療機関のなかに留まらず、様々な場所、そして薬剤師に限定しない医療従事者においても薬の鑑査作業をスムーズにします。きっと、あらゆる環境での医療資源の確保と、治療継続において機能を発揮することでしょう。

もしかしたら今後、この「コナミル®」も、こどもやくざいし体験薬局のなかで子どもが実際に体験できるようになるかもしれません。粉薬が多く処方される子どもにとって、その鑑査装置に触れる体験が薬に対する抵抗感を減らし、服薬拒否の軽減につながることも期待できそうです。一般生活者が多く訪れるドラッグストアショーで、このような鑑査装置が紹介(展示)されていることの意味について、深く考えさせられる貴重な機会となりました。

※当記事は株式会社ウィズレイ様の許可を得て取材ならびに撮影をおこなっています。製品のお問合せについては直接、株式会社ウィズレイ様へお寄せください。⇒ 製品に関するお問合せこちら株式会社ウィズレイ様に関するお問合せこちら

展示見学|検体測定室で情報発信!尿検査薬

東3ホール内でJACDS委員会が企画する体験コーナーでは、「野菜摂取(ベジミル®)」「脳年齢・脳健康年齢・ストレス(NeU®)」「血管年齢(メディカル・アナライザー®)」「疲労ストレス(MF100®)」などが測れる、セルフチェック体験もおこなわれていました。さらに、一般検査薬として薬局などで購入できる、新ウリエースBT®(テルモ株式会社)(尿糖と尿タンパクが同時に測れる尿検査薬)の体験も。こうした測定体験を通して、自身の健康状態を多方面から知ることは、セルフメディケーションにおいて非常に意味のある行動です※。

※尿糖や尿タンパクには個人差があり、この検査結果により病気の診断をおこなうものではありません。検査結果や体調について気になる人は医療機関で相談してください。

ここで、検体測定室には随時血糖値とHbA1c以外にも、糖に関する検査方法について知りたいという人が訪れることも珍しくありません。今回、東4ホール内のヘルスケアゾーンでは東3ホール内での体験コーナーとは別に、より詳しく尿検査薬とその活用について紹介するテルモ株式会社様のブースがありました。

一般に、「食後高血糖」や「尿糖」に関する認知度は、どの位あるのでしょうか?以前から、いわゆる“ベジファースト”や低GI食品など、血糖値が急に上がらないようにするための食事の順番や内容についてはよく言われてきました。昨今ではウェルビーイングの概念も相まって、血糖値の急な変動により抗ストレスホルモンで知られるコルチゾールが過剰分泌されることも、健康意識の高い人を中心に広まってきているかもしれません。

薬剤師をふくむ医療従事者は、セルフメディケーションの一環として扱う検査薬や生活者むけにつくられたパンフレットの最新情報を学び、その知識や説明方法について常にアップデートしていくことが求められます。また、検体測定室では個々のニーズに応じ、日常生活のなかで簡単にできる検査方法の情報提供をおこなうことも、行動変容の一助として有用でしょう※。

※検体測定室そのものは尿検査薬を含めて医薬品を販売する場所ではありません。尿検査薬は薬局やドラッグストアなど、医薬品販売に関する許可のある場所で購入できます。

展示見学|脂肪に対する新・訴求方法

そのほか、2024年4月に発売された「アライ®(大正製薬株式会社)」の展示ブースも、多くの来場者で賑わっていました。これは有効成分のオルリスタットが、膵臓から分泌される脂肪分解酵素リパーゼの働きを抑えることで、食事由来の脂肪を体内へ吸収させずに便として排泄する薬理作用をもつ薬。その作用のために起こる、油っぽいおならや便、肛門からの油漏れといった副作用に注意が必要です。
日本で初めて、“腹部が太めな方の内臓脂肪・腹囲の減少薬”として登場したこの薬は要指導医薬品につき、薬剤師から対面で情報提供を受ける必要があり、インターネットでは購入できません。

また、その購入には2つの条件があり、1つは「腹囲(へその高さ)が男性で85㎝以上、女性で90㎝以上」であること。もう1つは、「生活習慣改善の取り組みをおこなっている場合に限る」という条件です。こうした条件は従来の市販薬においては珍しく、販売元は専用のチェックシートを設けて販売する薬剤師に対し、徹底した販売手順を求めています。

このシートに記されているのは、食事と運動の改善に関する継続的な取り組みについて実際の記録を薬剤師が確認することや、アライ®を飲めない可能性がある該当項目の有無(使用中の薬で使い合わせの悪い薬がある、定期的な健康診断を受けていないなど)、3ヵ月あるいは6か月継続しても腹囲の減少が見られない場合の判断など。 これらをフローチャート形式で、20(初回)~22(2回目以降)の設問について確認した上で、購入できる仕組みです。やはり、手軽に飲めるサプリメントと違って、効能だけでなくリスクも併せ持つ医薬品ならではの配慮が欠かせません。

一方で、アライ®と同じ企業が展開するブランドでは、 “こちらの商品は、ウエストサイズ・生活習慣記録などのご提示は必要ございません。”というふうに訴える製品もありました。脂肪に対する様々なアプローチがセルフメディケーションで取り組めるようになった昨今では、誤解のないように伝えることも課題のひとつでしょう。
医療従事者は製品情報だけでなく、生活者のリテラシー向上に寄与するような企業側の姿勢や訴求方法についても、知識を身に着ける必要がありそうです。

運営支援 |3日で305名!HbA1c測定

今年も検体測定室連携協議会様/JACDS様の出展するブースでは、「ゆびさきセルフ検体測定室」を屋号に検体測定室が開設され、HbA1cの検査を無償で提供しました。昨年と同様に、測定機器「Afinion2」の提供はアボットダイアグノスティクス株式会社様、企画・運営支援は株式会社リテラブーストです。
昨年と比べて2倍の規模で実施された3日間では、1日およそ5時間の運営で、計305名の参加者を測定。参加者の世代は幅広く、薬剤師や看護師などの医療関係者でも体験したことのない人が多く参加していました。かく言う筆者もそこで測定支援をするなか、検体測定の経験がある参加者はほとんど見受けませんでした。

通常、地域の保険調剤薬局やドラッグストアで常設されている検体測定室では、HbA1c検査の場合、測定費用として600~800円くらいかかることが一般的で、そこに長蛇の列ができることはありません。このようなイベントで並んでも無償で体験してみることは、検査内容や意義を知る以前に有料という部分がネックで機会を見送っていた人に対し、非常によいきっかけとなったことでしょう。

ただ、検体測定事業者にとって、測定試薬などの消耗品にかかる費用を削ることは困難です。測定意義や目的の捉え方を適格に伝えていけるかどうかが、周知と受検者が定着するための課題と言えるのかもしれません。

編集後記

今回の2024年で印象に残ったのは、多くのブースが超満員で入場制限をおこなっているところが多かったということ。長蛇の最後尾には出展社のスタッフが「入場制限中」と掲げた看板を手に、“時間の目途はつかない” “ブース内の参加者が少なくなったら順次、入場を再開する”というような案内をしていました。一昔前に比べると、とくに比較的大きなブースでクイズやセミナーなどをおこなうために、必要な滞在時間が長くなったように筆者は感じます。

まずは、必ず訪れたい出展社のブースには、混雑する前(午前中の出来るだけ早め)に足を運んでおくこと。測定などの体験提供は時間を区切って実施するブースが多いため、その時間をチェックし、実施5分前くらいには余裕をもってブースに赴くのが無難です。また、訪れたいブースは案内図にある番号を押さえておくと、素早く探せます。

毎年、このドラッグストアショーでは新しい発見や知識の習得、出会いがあり、ときには自身の不勉強さを恥ずかしく感じることも。現代のネット社会ではWeb環境さえあればいくらでも情報が手に入る反面、リアルで体験しないと気付けない情報や感動もあるのではないでしょうか。今後もこのような機会を活用し、アップデートを怠らないようにしようと心に刻んだイベントでした。

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この記事を書いた人

曽川 雅子のアバター 曽川 雅子 株式会社リテラブースト代表、薬剤師

大学卒業後15年間の薬局勤務を経て独立。
多彩なシーンで検体測定室のプロデュースと、エビデンスの確かな記事の執筆提供を中心に活動中。「ここで聞けて良かった!」というお声が原動力。

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