検体測定室(簡易血液検査)を備える薬局を探すには「ゆびさきナビ」で検索するのが便利です。ただし、検査はあらかじめ連絡が必要な場合や事前に確認すべき内容もあり、急に伺うのは推奨されません。ここでは、検体測定を受けようと思ったときに連絡をする際の手順から、注意点や準備、検体測定室と絡めた薬局の活用方法について紹介します。
「ゆびさきナビ」で身近な検体測定室を探そう
2024年4月末時点で全国に1,856件、検体測定室を常設する薬局は存在するものの、これは全国の薬局数6万弱と比べると3%ぐらいしかありません。そのため、闇雲に自らの足で探し回るよりも、インターネットから検索する方が無難です。検索には、検体測定室連携協議会が運営および管理している「ゆびさきナビ」が便利で、誰でも無料で調べることが出来ます。都道府県の選択から、より細かいエリアの選択と検査項目を絞り込んで検索する方法でとても簡単です。
Updateしている検体測定室を探す方法
上記の検索サイトを使えば薬局やドラッグストアだけでなく、一般企業やそのほかの事業形態においても、検体測定室を常設している事業所が探せます(イベント型検体測定室の検索は出来ません)。実際に、期間を限定して開設するようなイベント型での検体測定室では、このサイトを使って受検者さんに身近な検体測定事業所を紹介することも多々あります。
しかし、検索するといくつかあって、どこを選べばよいか分からないという人もいるでしょう。そこで、各事業所がどのくらい検体測定室に力を入れているか、検索サイト上の測定アイコンを見ることで確認できるポイントの2つを紹介します(脂質検査に限り参考にしてください)。
検体測定室を探すPoint①「Non-HDLc」
1つ目のポイントは、「Non-HDLc」です。脂質の3項目「中性脂肪(TG)・悪玉コレステロール(LDLc)・善玉コレステロール(HDLc)に加えてこの「Non-HDLc」の記載がある所は、新しい情報を更新しながら対応してくれる期待が持てるでしょう。
「Non-HDLc」は、動脈硬化を発症させる要因として注目されている「レムナント」を評価する指標のひとつです※1。動脈硬化はこれまで、悪玉コレステロール(LDLc)ばかりが問題だと考えられてきました。しかし、リポタンパク質が血液中で代謝されるときに生じる中間代謝物の総称「レムナント」のうち、中性脂肪を多く含む「CM(極超低比重リポタンパク)レムナント」や「VLDL(超低比重リポタンパク)レムナント」も動脈硬化を発症させることが分かってきたのです※1。
2024年春の時点で、市場に出回っている検体測定室で用いる測定器のうち、脂質が測れるものは4種類(アフィニオン、コバスb101、コレステックLDX、BBx)。その9割以上を占めているのがアフィニオン(アボットダイアグノティクスメディカル株式会社)とコバスb101(ロシュ・ダイアグのスティックス株式会社)で、現在どちらも「Non-HDLc」が測れる仕様です。(以下に示す測定機器2種類)
つまり、測定できるものの表記していないのは、単に変更届(変更の申請)を行っていない可能性も。リポタンパク質などの最新情報ももれなく得たいと思う人は、「Non-HDLc」の記載があるところを選ぶのがおすすめです。
検体測定室を探すPoint②「食後の中性脂肪」
2つ目のポイントは、「食後の中性脂肪(トリグリセリド)」です。2022年9月までは、10時間以上の絶食をした上で測定する「空腹時の中性脂肪」の基準値しか示されていませんでした。これについて、食後の中性脂肪(随時中性脂肪)の基準値も追記されたのは、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022」が発行された2022年10月です。その基準値は、空腹時の中性脂肪では150mg/dl以上、食後(随時)の中性脂肪では175mg/dl以上と示されています。
ここで、中性脂肪は空腹時や非空腹時(食後)にかかわらず、上昇すると将来の冠動脈疾患や脳梗塞の発症が予測されます。しかも、わが国でコレステロール値が正常な日本人11,068人を対象に15.5年間に渡り追跡された疫学調査では、空腹時よりも非空腹時(食後)における中性脂肪の値の変動の方が、動脈硬化のリスクを反映するといった報告も。この調査によって、非空腹時の中性脂肪が高いほど、心筋梗塞や突然死などの相対リスクが上昇することも分かりました※1。
したがって、脂質の検査に関しては「Non-HDL」と「食後の中性脂肪」の2点を押さえている事業所なら、測定支援だけでなく、最新情報を交えた解説を受けられる期待が持てます。ただし、事業所によっては理由があって、敢えて申請を行っていない所もあるかもしれません。
サイトで探したあとは必ず直に電話などで問合せを行い、どの項目が測定できるのかも併せて確認するようにしましょう。
問合せをする前に!チェックリスト
現在、全国に常設する検体測定室の9割以上が、薬局やドラッグストアに併設されています。したがって、多くの検体測定事業所には検体測定室以外の日常業務(処方せんの受け付けや商品の販売など)があり、おそらく、問合せに応じる全ての人が検体測定室について詳しいという訳ではありません。場合によっては、折返しの連絡となることも想定してください。
そこで、スムーズに問合せに応えてもらえるよう、次に挙げる項目についてあらかじめ準備しておくとよいでしょう。
検体測定室に問合せるための『チェックリスト』
□ 測りたい項目(血糖・脂質・肝機能)
□ 血糖で測りたい項目(随時血糖値BS・HbA1c)
□ 脂質で測りたい項目(TG・LDLc・HDLc・Non-HDLc)※
□ 消毒用アルコールのアレルギー有無
□ 測定日時の希望(曜日や時間帯などの候補)
□ 検体測定室に滞在できる大体の時間
□ 出血リスクのある病気にかかっていないか
□ 出血リスクのある服薬を使っていないか
□ 担当者が不在の場合に折返し連絡の希望日時
※脂質の略称はそれぞれ、TG(中性脂肪)、LDLc(悪玉コレステロール)、HDLc(善玉コレステロール)。
知っておきたい注意点
検体測定室を利用するにあたり、知っておきたい注意点がいくつかあります。
測定費用は事業所ごとに違う
検体測定室における測定費用は、処方せんの扱いのように国で定められた計算方法がある訳ではありません。加えて、健康保険の適用はもちろん、生活保護や自立支援などの公費適用もありません。また、測定1回ごとに必要な測定カートリッジ(試薬)は検体測定室で備える測定機器に対して専用のものが必要で、価格もそれぞれです。そして、測定にかかる費用には試薬カートリッジだけでなく、穿刺針や消毒綿、そのほか消耗品などにかかる費用も合わせて算出されます。
これらの価格は事業所ごとで自由に設定が可能で、試薬カートリッジに見合った算出となっていることがほとんどです。相場の目安としては、次の表を参考にしてください。
測定項目 | 相場価格 |
随時血糖値BS | ¥200~¥300 |
血糖HbA1c | ¥500~¥600 |
脂質4種 | ¥600~¥1,000 |
肝機能3種 | ¥1,500~¥2,000 |
自分で針を刺せないと測定できない
一般に血液検査と聞くと、健康診断や医療機関でおこなう採血検査のように、腕の内側から看護師によって血液を採取されるイメージを持つ人もいるでしょう。しかし、検体測定室では自身で穿刺針を刺せない人は測定することが出来ません。そのため、針を自分で刺すという行為そのものが自分では難しいと考える人は、検体測定室ではなく衛生検査所で相談したり、医療機関を受診したりするようにしましょう。
ただし、医師の診断によって必要があると認められた場合を除き、検査費用は自費となることに注意してください。
一方、測定機器の取り扱いや穿刺の手順、前後の準備などについては運営スタッフがしっかりとサポートします。また、穿刺針にはいくつもの種類があり、測定する項目によって最小限の太さや深さ(針の長さ)を選んでくれる可能性も。怖いと思う人は、その針の仕様や特徴について説明を受けてから穿刺作業に臨むと、すこしでも不安がまぎれるかもしれません。
健康診断の代わりにはなりません
まだ検体測定室が普及しきれていないためか、「検体測定室で測れば健康診断に行く必要はない」という受検者さんの発言をときどき耳にします。前提として直近1年以上、健康診断や健康診査を受けていない人はそちらを先に受けましょう。検体測定室で測れる項目は健康診断の域を超えず、定点で自ら数値を把握することに意味をもつ9項目に的を絞って測定するものです。
糖尿病や脂質異常症など初期の段階では不調を自覚することが難しいながらも、血液の数値としてその兆候を早期の段階から発見できるのが検体測定室。次の健康診断までの1年間で、数値に変動を来たしていないかを確認するための設備です。
また、2017年1月から始まり、2022年1から対象範囲も拡大されて注目を集めている「セルフメディケーション税制」では、控除を受けるために必要な取り組みに該当しないことに注意しましょう。
申し込み後の事前準備
前述した問合せのためのチェックリストを確認し、検体測定室に申し込みの連絡を入れたら、事前準備にも取り組んで当日の検査に臨みましょう。
より、医療機関で測る血液検査に近い数値を確認したい場合は、10時間以上の絶食時で受けられるように直前の食事時間を考慮してください。ただし、腕の内側から採取する静脈血と、検体測定室で指先から採取する全血(毛細血管内を流れる末梢の血液で静脈血と動脈血が混ざった状態)では、大きな差はないものの完全には一致しないことを念頭におく必要があります。
手指の保湿ケアに注意!
脂質の検査では、保湿成分を含むオイルや軟膏、クリームなどをつかったハンドケアに注意が必要です。サラっとしたクリームやローションタイプなら、アルコール消毒によって拭えることも多いため、影響はほとんどありません。ただ、浸透力の高いオイルや軟膏では表皮の奥の方に成分が浸透し、中性脂肪の値が高く出る可能性があります。
ここで、肌のターンオーバーは身体の部位や肌の厚さによっても異なり、手では大体9~13日間くらいです※2。心配な人は、測定する2週間ほど前から測定に使う部分だけ、保湿を避けるというのもひとつの方法でしょう。測定に使うのは多くの場合、利き手と逆の中指もしくは薬指の先端(第一関節よりも指先側)です。
柑橘類などは石鹸で洗浄が必要
血糖の検査では、測定前の消毒に用いるアルコール綿(酒精綿)だけでは不十分なことがあります。目に見えなくても、みかんなどの柑橘類の成分が指先の皮膚に残った状態では、血糖の数値が高く出てしまうため注意しましょう。
検体測定室を設置する場所の付近には、受検者が手を洗浄できるような設備も整っていることが基本です。ただし、測定項目によってアルコール消毒だけでも問題なく測定できることも多いため、必ずしも測定前に手指の洗浄を求められることはありません。気になる人は洗浄できる場所を聞いて、石鹸と流水でよく洗ってから測定に臨むとよいでしょう。
手指の冷えに注意!
冬場だけでなく夏場も、手指の冷えには注意しましょう。とくに盲点なのは、エアコンで屋内を冷やし続けている夏場です。手指や手首、もっと言うと腕全体が冷えていると、針で穿刺をしてもなかなか検体(血液)が出てきません。うまく検体を絞り出せずに量が不足していると、再度、刺し直しになることも。指先だけでなく、腕や手が温まっていると血流も良いことが多く、頑張って絞り出そうとしなくてもスムーズな採取が可能です。
心配な人はカイロで温めたり肩を回したり、血流を促してから測定に臨むと良いでしょう。
薬局の活用法
処方せんを扱う保険調剤薬局(以降、薬局)は、処方せんがなくても様々な相談のできる場所です。例えば、健康診断で送付された結果表の見方や捉え方、自分に合った健康食品やサプリメントの摂取方法など。
そのほか、「電子お薬手帳アプリ」の使い方や活用方法などを聞くことも出来ます。現状では、お薬手帳はどの薬局でも同じ決まりで、3ヵ月以内に同じ薬局へ手帳を活用して処方せんを持ち込むと、薬局での1回あたりの会計が30~50円(3割負担の場合)ほど安くなることがほとんどです。これは既存の紙冊子だけでなく、「電子お薬手帳アプリ」も同じで、併用薬や相互作用などの確認を行えます。しかし、検体測定室と同様にこの「電子お薬手帳アプリ」も、まだそこまで広く普及しているとは言えません。
そのほか、薬局に処方箋を持ち込むときは、同じタイミングに複数の処方せん(別々の病院からもらった処方せん)を持ち込むと約30円(3割負担の場合)安くすむことや、平日19時以降と土曜日13時以降は会計が高くなることなど。薬局内には必ず掲示されている全国一律の決まりではあるものの、よく知らない人が多いのも現実です。
検体測定室をひとつのきっかけとして、測定をしながら薬剤師を含む運営スタッフと雑談など交わしながら、様々な情報を収集してみてはいかがでしょうか?
【当記事における参考資料】